歯の中には痛みを感じとる神経や、歯に栄養や水分を送るため血管などが入っている「歯髄」と呼ばれる場所があります。歯髄は、虫歯や何らかの衝撃によって、痛みが出てきたり、炎症が起きたりすることがあります。そして、その場合には歯髄を除去し、歯髄の入っていた部分を綺麗に清掃や消毒をしていく必要があります。この治療を、「神経をとる」という言い方をします。
歯に痛みや違和感があり歯科医院へいくと、「これは神経を取らないといけませんね。」と言われた経験はありませんか?「神経をとる」と聞くと、自分の歯がなくなってしまうんではないかと、心配してしまう方も多いのではないでしょうか。
神経をとっても、歯は無くならないので安心してください。しかし、神経ってなに?何のためにあるの?どんな時に神経を取らなきゃいけないの?と疑問に思うことは多いと思います。
そこで今回は、そんな「神経をとる」に関して分かりやすく解説していきたいと思います。
◆歯の神経の役割
歯の神経(歯髄)は、一度とってしまうと二度と以前のような健康な歯には戻ることはありません。そのため、神経の役割をしっかりと理解しておくことが、今後あなたの健康な歯を保つためにはとても大切です。
歯の神経(歯髄)には、大きな役割が2つあります。1つ目は、栄養や水分を運ぶことです。そのため、硬くて丈夫な歯質を保つことがでたり、虫歯から歯を守ったりすることができています。また、根っこと歯のバランスを整えたり、根っこの成長を助けたりして、しっかりと歯を支える役割もしています。。
逆に歯の神経をとってしまうことで、歯には栄養や水分は送られなくなります。そして、枯れ木枯れ枝のように、スカスカになり、大変もろい歯質の状態となります。
2つ目は、歯の状況を察知することです。歯が割れたり、虫歯になったりした場合に、神経がその状況を察知し、痛みで知らせてくれるのです。また、神経をとってしまった歯は、痛みを感じないため、虫歯になっても発見するのが遅れてしまうことが多く、最悪の場合気付いた時には抜歯なんてこともあり得るのです。
◆神経をとらなくてはいけない場合
もちろん神経はとらない方が、歯の寿命も長くなり今後、長く健康な歯を保っていくには、とても重要な要素です。しかし、神経をとらなくてはいけない状況になってしまった場合には、素早く神経をとる処置が必要となります。
・虫歯が神経まで達している場合
虫歯がかなり大きくなり、神経まで達してしまっている場合には、激しい痛みを伴います。そして神経をとる処置をしなくてはいけません。
例えば、少し黒くて穴も開いているような感じもする、虫歯には気づいていたけれど、まだ痛みはないからといって思い放置してしまう方。それは、いずれ神経まで虫歯が達し、激しい痛みが伴うような大きな虫歯に発展していきます。そして神経をとる処置をしなくてはいけなくなります。
また、虫歯以外では、何らかの衝撃で歯に亀裂やヒビが入ってしまい、それが神経まで到達している場合にも神経をとる処置が必要となります。
・知覚過敏が重度の場合
通常、知覚過敏では、しみるのを予防する薬を塗布したり、しみる箇所を歯科材料でカバーしたりして様子をみることがほとんどです。しかし、あまりにも日常生活に支障をきたすような重度な知覚過敏の場合には神経をとって、痛みなくす方法を選択する場合があります。
・根っこの先に膿が溜まっている場合
この場合には、すでに神経は死んでしまっていてる場合が多いです。そして放置してしまうと、根っこの先から炎症が周りの骨へと広がっていきます。
激しい痛みではなく、噛むと違和感があったり、歯茎が腫れたりといった症状がでます。また、歯の動揺も伴う場合もあります。
神経が死んでしまっているため、歯自体に痛みはありませんが、神経がある歯と同じように、神経をとる処置をしなくてはなりません。
◆神経をとらないようにするためにできることは?
神経をとってしまうと、歯は、枯れ木枯れ枝のようにもろくなり、健康な歯に比べ寿命は短くなります。そして一度神経をとると、二度と戻ることはないため、できる限りとらずに、残せるようにしていきたいですね。そのためには、日々の丁寧なお手入れが重要ななってきます。
まずは、毎日お家で行なっているブラッシングの見直しです。自分の磨き方で、汚れやプラークはしっかりと除去することができているか確認する必要があります。磨き方に不安のある方や、分からないという方は、歯科医院で一度指導を受けてみるのも効果的でしょう。
また、より細かい部分の汚れを除去するために、歯間ブラシやフロスを歯ブラシと併用して使用することをオススメします。
そして次は、定期的に歯科医院で行き、定期チェックをすることです。定期チェックをすることで、もし虫歯が見つかったとしても、神経に到達する前の小さな段階で発見でき、神経をとらずにすみます。また普段の歯ブラシでは届かずに、取り切ることができていない部分の汚れも、綺麗に除去してもらうことができるため、虫歯予防にもつながります。
この先、神経をとらずに自分の健康な歯をずっと維持していけるように、毎日のお手入れや、定期的な歯科医院での検診を続けていけるように心がけましょう。