子どもの歯のもととなる芽(歯胚)は妊娠中にできるので、丈夫な歯にするためにはバランスのいい食事をとるように心掛ける必要があります。また、妊娠中は女性ホルモンの影響で歯茎に炎症が起こりやすく、歯周病菌が増殖すると低体重児出産のリスクも高まるので注意しなければいけません。
妊娠中のお母さんの行動が、生まれてくる子どもの乳歯や永久歯に影響を与え、出産の際にも悪影響を及ぼす可能性があります。
生まれてくる子どもには、健康で歯も丈夫に生まれてきて欲しいですよね。
そこで今回は、妊娠中に気を付けることやリスクを理解していただき、生まれてくる大切な子どものためにできることをぜひ実践していただければと思います。
◆歯のもとになる芽(歯胚)はお母さんのお腹の中でできる
生まれてくる子どもの歯のもとになる芽(歯胚)は、妊娠中にお母さんのお腹の中でできます。乳歯が子どもの口の中に生えてくるのは生後約6ヵ月ごろですが、乳歯の歯胚は妊娠7週目ぐらいからでき始めます。
その後、妊娠4ヵ月頃から歯胚にカルシウム成分の沈着(石灰化)が始まり、丈夫で硬い歯になる準備が始まります。
また、永久歯の歯胚も妊娠4ヵ月ぐらいからでき始め、妊娠後期になると石灰化も始まるので、妊娠中の栄養不足は子どもの歯に影響がでることがあり、バランスのいい食事を心掛ける必要があります。
◆子どもの歯を丈夫にするには栄養バランスを整えよう
子どもの丈夫な歯を作るためには、妊娠中に栄養バランスの整った食事をとることがとても重要です。
カルシウム・リン・ビタミンA・ビタミンC・ビタミンD・タンパク質が含まれる食品をバランスよくとるようにしましょう。これらの栄養素は 、肉・魚・野菜・卵・牛乳などに含まれています。
◆妊娠中は妊娠性歯肉炎・虫歯になりやすいので注意
・女性ホルモンの影響で妊娠性歯肉炎になりやすい
妊娠性歯肉炎は、妊娠中期の妊婦さんの半数以上にみられ、歯茎が腫れて出血しやすくなります。
妊娠中は女性ホルモンの分泌が活発になります。口の中の歯周病菌は、妊娠中に多く分泌する女性ホルモンのエストロゲンを栄養源に増殖するため、歯茎に炎症が起こりやすくなります。
しかし、プラーク(歯垢)が少ない状態を保つことさえできれば、妊娠性歯肉炎の発症を防ぐこともできるので、ブラッシング等の口の中のケアが重要なポイントとなります。
・つわりによって虫歯リスクが高くなる
妊娠中につわりで歯磨きが難しくなると、口の中に汚れが溜まりやすくなります。さらに、食事の回数・嗜好の変化や、つわりによる胃酸の逆流によって口の中が酸性に傾きやすくなります。
口の中が酸性の状態が長く続くと、虫歯から守る歯の表面の成分が溶け出し、虫歯ができやすい状態になってしまいます。
・早産・低体重児出産のリスクも
妊娠中に歯周病が進行すると、腫れた歯茎の炎症物質が毛細血管を通って歯周病菌とともに血液中に入り、全身を巡ります。
子宮に炎症物質が到達すると、その刺激で子宮収縮を引き起こし、早産・低体重児出産になるといわれています。
歯周病に罹患している妊婦さんが早産になるリスクは、歯周病に罹患していない人の7倍以上もあります。妊娠中の早産の原因である、タバコ・アルコールとともに注意しなけばいけません。
また、妊娠中に増えてしまった歯周病菌は血液を介して胎盤にも付いてしまい、細菌感染を起こします。そうすると、お腹の中のこどもが出産時に胎盤を通して歯周病に感染してしまうリスクもあります。
◆つわりがないときに丁寧にケアをしましょう
つわりが原因で、ブラッシングが難しいことも多いかと思います。つわりがある時には無理しない程度にケアを行い、難しい場合はうがい剤を用いてのケアも取り入れてできる限り予防しましょう。
また、歯ブラシは小さいほうが奥に入れても気持ち悪くなりにくいのでおすすめです。
さらに、注意するのは妊娠中だけに限らず、出産後にもむし歯・歯周病菌が増殖すれば、生まれてくる赤ちゃんに唾液を介して菌を移してしまうため、出産後にもブラッシング等のケアはとても重要です。
◆最後に
子どものために妊娠中にできることや、リスクについてご理解いただけたでしょうか。妊娠中は新しい生命がお母さんの体の中で育つ特別な時間です。
嗜好が変わったり、つわりがあったりとさまざまな変化があって中々いつものようにケアができないこともあるかと思います。
しかし、赤ちゃんの健康を守り、丈夫な歯で生まれてきてもらうためには、できる限り妊娠中のお母さんの口の中の環境を整え、バランスのいい食事にも気を付けることが重要です。
妊娠中のケアの仕方で心配なことがあれば、いつでも相談してくださいね。