唾液の成分に、抗菌・保護・修復作用があるからです。
転んだり刃物で切ったりしてできた外皮の傷は、汚れや空気中の細菌が感染して炎症を起こし、化膿することがあります。化膿すると傷の治りが遅くなり、炎症が周辺に広がることもあります。
しかし口の中の傷は、唾液の作用によって早く回復することができます。傷に付いた細菌を洗い流す「自浄作用」が働き、リゾチームやラクトフェリンといった成分が「抗菌作用」をし、細菌が繁殖しにくくなります。
また唾液には、「保湿・保護作用」をするムチンという成分が含まれており、頬や唇の内側や舌といった柔らかい粘膜組織に、直接刺激が伝わらないよう働いています。そして唾液に含まれるヒスタチンという成分は、細胞を増殖させて傷をふさぐ「修復作用」を持ち、さらに最近の研究では、上皮細胞の再生を促進する作用もあるといわれています。
このように唾液は傷を早く治すだけでなく、歯の表面の溶けたところを修復する「再石灰化作用」、消化吸収を助ける「消化作用」、食べ物を飲み込みやすくする「嚥下作用」など、多くの働きをします。
しかし唾液は、加齢やストレス、薬の副作用などによって減少しやすいので、注意が必要です。食べ物をよく噛み、水分をしっかり摂り、さらに唾液腺マッサージなどをおこなって、唾液の分泌量を促しましょう。