タバコの煙には数多くの有害物質が含まれ、酸素供給量を妨げて、免疫力も下がるため歯周病菌に対しての抵抗力が著しく低くなるためです。
タバコを吸っていても「出血もないし、歯磨きでのケアもしているから歯周病になんてなっていない」とおっしゃられる方がいらっしゃいます。
確かに、歯ぐきの炎症のサインである出血がなければ、歯周病の心配はないと思われるの仕方がないことかもしれません。しかし、これには理由があるのです。
今回は、喫煙での歯周病へのリスクや予防法をご理解いただき、歯周病のリスクを早期に防いでいただけれと思いますので、ぜひご一読ください。
◆喫煙者は歯周病になりやすい?
タバコが体によくない、ということは周知の事実かと思います。喫煙した際に口から入ったタバコの煙は、粘膜や歯ぐきから吸収されていきます。タバコの煙には多くの化学物質が含まれ、そのなかには発がん性物質も存在します。
主な有害物質は、「一酸化炭素」「ニコチン」「タール」が挙げられます。
また、タバコを吸う本数や喫煙年数よっても変化しますが、喫煙者は非喫煙者に比べ約2倍から10倍近くまで歯周病への罹患率が上がるといわれています。
さらに、タバコは本人だけではなく副流煙で不特定多数に悪影響を及ぼす可能性もあり、タバコが及ぼす影響は計り知れません。
◆タバコが口の中に与える影響
・ 酸素供給が妨げられ歯周病細菌が増える
タバコを吸う際に発生する一酸化炭素を吸い込むと、酸素供給を妨げて歯周ポケットの中で細菌を増殖させます。
歯周病細菌は酸素を嫌うため、歯周病菌にとって最高の条件が揃ってしまうことになります。
増殖して炎症が続くと歯の周りの骨が吸収されて支えが少なくなり、最終的には歯がグラグラして抜歯になる可能性もあります。
・血管が収縮されて栄養不足に
喫煙するとニコチンの血管収縮作用で、血流量が減少してヘモグロビン量の減少や酸素飽和度の低下を引き起こします。
血管収縮が起こると、歯ぐきに必要な栄養が届かないだけではなく、歯ぐきに炎症が起こっていたとしても、表面上に炎症が表れにくくなります。
通常、「出血は歯ぐきの炎症のサイン」ですが、表れにくくなることは非常に危険で、歯周病にかかっていることの自覚を遅らせ、気付いたときには重度の歯周病になっていることもあります。
・白血球の働きが半減して免疫力を低下
口の中の細菌と戦う白血球の機能が低下するため、免疫力が弱まって歯周病菌に感染しやすくなります。
・タバコのタールが汚れをつきやすくする
肺を黒くする原因となるタールは、歯の黄ばみの原因にもなります。
また、タールはネバネバした性質を持っていて、歯についたタールは接着剤の役割を果たし、汚れを溜まりやすくしてしまいます。
◆まずは歯周病検査で歯ぐきの状態をチェック
タバコを吸っていると表面に炎症があらわれにくく、気付いたときには歯がグラグラになり、手遅れな状態になることもあります。
しかし、歯医者での歯周病の検査を受ければ、歯ぐきの状態や歯の動揺度などをしっかりチェックしてもらうことができます。
定期的に検査を受けることで、ご自身の歯ぐきの状態の悪化を早期に発見することができ、早期治療を行うことで大切な歯の寿命を長く伸ばすことができます。
◆喫煙者が歯周病を予防するには?
喫煙者は、非喫煙者に比べて歯周病にかかりやすいだけでなく、歯周病の治療効果が低く治りが悪い傾向にあります。
そのため、歯周病の予防を考えればやはり「禁煙」が一番の近道といえます。
歯周病治療や予防の基本である、歯磨きと歯石除去等の歯医者でのクリーニングを最低限行うことはもちろん重要です。
しかし、喫煙者にとってはその治療効果も非喫煙者に比べると、あまり期待できないのが現状です。
◆禁煙したら歯周病は治る?
「禁煙しても歯周病が治るわけではないのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、禁煙をすると歯周病菌に対する免疫ができて、細胞の働きが高まるため治療効果が向上します。
ある程度進行してしまった歯周病でも禁煙は有効であるといわれていますので、早めの禁煙が歯周病の1番の予防となるといえます。
ただ、どうしても禁煙が難しいという場合には、歯周病の重症化を防ぐためにも禁煙外来でプロに相談するのも1つの手です。
歯周病やご自身の健康、周りの家族・友人への影響も考え、一度禁煙にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
◆最後に
歯周病は、タバコを吸う人は吸わない人に比べてかかりやすく、歯周病の進行も早いうえに治りにくいのが特徴です。
歯周病の予防を考えるのであれば、1番の近道は禁煙です。歯周病に限らず、全身へのリスクから考えても、少しずつでも本数を減らすことをおすすめいたします。
また、3ヶ月に1度の定期検診で歯周病の状態のチェックや、クリーニングを行いできる限り予防をすることを心掛けることも大切です。